475話 バッテリー 2

自分の携帯は「NTTドコモだ」と思っていたら、そこでは


「シャープだ」「ソニーだ」「日立だ」「ムーバだ」「フォーマだ」とか、まったく意識しなかった国籍問題のような、血統書問題のようなものが突きつけられる。


そんなん、知りまへんがな。携帯にも「NTT DOCOMO」としか書いてまへんがな。


そこで、さまざまな状況証拠を拾い集め、差し込み口の形状の見比べをさんざんやって購入したのは、難波駅2階のコンビニでの話。


携帯電話充電器の売り場には墨痕鮮やかに「一度購入し、包装破りしもの、断じて返品に応じざるゆえ注意されたし」という注意書きがでかでかと書かれている。


そりゃそうだろう。一度包装を解かれたら、もう売り物にはならないんだから。しかし、筆者同様に「私の電話は何だろう」という方も、おそらく携帯電話充電器購入人口の少なからずの割合で存在することは容易に想像がつく。


そして、そういう方々の中には、安易に

「たぶん・・・これっ」

という程度の確認で購入し、しかし合わず、コンビニのレジで「合いまへんがな。交換しておくれやっしゃ」とずうずうしく申し出る人口も確実に一定の割合で存在するであろうことは容易に想像がつく。


そして、その無理難題の数が増えるにつれ、充電器売り場の「返品交換一切お断り」の表示も大きくなったこともまた容易に想像がつく。


ちなみに、難波駅2階コンビニの充電器は、レジの真ん前にあった。そこで自分の携帯電話を取り出し、さんざん悩んだ後、もっとも間違えのないと思われるものを持って、レジへ。


レジのお兄ちゃんは「これは、一切返品交換できませんで」


とトカゲのような目をぎらりと光らせて筆者に確認してきた。


筆者は、「この断りを必ず入れるべし」、という接客マニュアルに忠実なトカゲ兄ちゃんの文言に「ああ、この人も覚えることがたくさんあって大変ね」と同情し、慈愛に満ちた目で「はい」と答えた。さらに


「あっ、すぐに使いますから袋はいりません」


なんて一言も付け加えた。


そして店の前でばりばりと包装を破り、さっそく充電を開始しようとしたが、そうである、多くの読者が既に予想されているとおりである。


差し込みプラグが合わなかったのである。


ここで再びレジの真ん前の充電器売り場に行って、再度買い直す勇気は筆者にはない。トカゲにいちゃんの目から出る

「あほや〜、こいつあほや〜。間違いよった〜光線」


が全身にびしびしと突き刺さり、精神的血まみれになり、携帯電話を観るたびにトラウマにのたうち回ることになる。


筆者は、一階下にある別のコンビニへ行って慎重に慎重を期して選び抜き、正しい充電器を買い直したのであった。


ちなみに何の役にも立たない方の充電器の末路であるが、捨てずに置いておいた。


先日、和歌山県中部のとある田舎町まで、知人の急なお通夜に駆けつけ、帰りの電車がなくなって我が家に泊まった知人がいた。取るものもとりあえず駆けつけた状態だったので、既にだいぶん使っていた彼女の携帯のバッテリーも途中で力尽きた。


バッテリーが効かないと、携帯が記憶している全てのデータもなんら役に立たない。関係先への連絡もままならない。筆者はほこりをかぶっていた「間違って買った携帯充電器」を持ってきてみた。ジャストフィット!!!


我が内なる「グレートサムシング」は、来るべきこの日のあることを予知し、間違えるはずのない間違いを起こさせ、彼女の危機をすくうべく。無駄な出費と思われた先日の買い物をさせたのであろう。


これを「ただの偶然やんけ」と思うあなたは、この大いなる力の導く幸福を味わえない人生を送るであろう。


話題は再びパソコンへ。


と、まあパソコンのバッテリーの劣化を防ぐべく、できるだけ使い切っては電源につなぐように鋭意努力をしているけれども、半年でなんか劣化してきましたんでっせ、ということを我がエレクトロニクス顧問の電気屋の息子でIT講師の雅志さんにぶつけてみた。


「それは、おかしいですね。その注意の仕方は正しいですよ」


との返答である。


「で、そうそう、充電しながら使うのも劣化を早めますね」


「えっ・・・・・・・・・・」


筆者、特急サザンの一時間の道のりで蓄電残量少なくなったパソコンを、帰宅するなり電源につないで、せっせと続きを打つ、ということなどまったくの日常茶飯事。


ということは、帰宅したら、一度バッテリーをはずして、電源コードで続きを打ち、業務終了後バッテリーを再度セットして、電源を切った状態で充電する、という手続きがいるってことなのね。


う〜む。バッテリー劣化防止の道は奥が深い。今までの「使い切り努力」というのは、何の役にもたたなかったのだ。