495話 スルット関西

夏休みである。


関西私鉄各社に地下鉄などがジョイントしてJRに対抗すべく打ち出した(って勝手に決めているが)フォースの宿りしリーズナブル乗車券「スルット関西 3デイチケット」の季節になってきた。(8月31日までの期間限定である)


一枚5000円で3日間とびとびでも使用でき、西は姫路、南は和歌山、高野山。京都、三重、滋賀まで行けるというすぐれものである。さらに沿線の名所旧跡の入場料まで割引になる特典もついている。(って前にも書いたけど)


かくいう今日もそのカードでお仕事に行く。和歌山から奈良に行き、尼崎に寄って道場に行き、大阪市内のホロンPBIさんで講習会をやって和歌山に帰る。


ざっと3500円ほどの道のりを、一日分1666円で行けてしまう。


そしてこの夏も3日分のうち2日使ったら、一回分を残す。


そして大安吉日を選び(っていうのは嘘)お城マニアである中二の長男を呼び、正座させる。


そして、和歌山から世界遺産姫路城に行き、大阪城に寄り、場合によっては京都まで足を伸ばして帰ってくると、およそいくらぐらいの交通費がかかるか、ということを微に入り細にわたってレクチャーする。


姫路までなら五千数百円。京都を含めば6千円は超えるであろう。


琵琶湖畔にまで足を伸ばし近江の国、坂本あたりまで行ったったりもできるんだ、という話もするであろう。


さすれば、定価5000円。二回使ったから残りは1700円分であるカードが、彼の目には次第に福沢諭吉翁を冠する1万円札のごとく見えて来るであろう。


そして彼の脳は瞬時に「近畿圏・このカードでいけるお城マップ」が浮かび、この冬にも実行したこのお城ツアーと今回行くであろうコースの目的地をどのように追加・変更するかについての検討が始まり、ついでに伊丹時代の親友でこの夏大阪市内に引っ越しした「いっしー」に会いにいくプログラムを加えるかどうか、などなどとぶんぶんとうなりを立てて回転するであろう。


金額が問題なのではない(ってけっこう問題にしてるけど)。彼が彼の行動によって、同じものの価値を倍にも3倍にもふくらませていけるということに気づくことが重要なのである。


彼が興奮の極に達し、親父の背中から後光が差しているがごとく錯覚したおりを見計らって、カードを渡すのである。


そして、我が懐は1700円分しか痛まないのに、息子に対してはその倍〜3倍偉そうな顔ができるのである。親子ともども幸せである。スルット関西加盟 私鉄各社のみなさんありがとうございます。