541話 チャングムは偉い

人体竹輪理論という暴論の途中ではありますが、閑話休題


さて、世間はというと日本ハムが史上初の北海道ご当地優勝を果たし、子どもの通学路に車で突っ込んでなたを振り回すという信じられない暴挙がふるわれた今週ですが、筆者は、実家に木曜日から泊まって金曜日に恒例の亡父の墓参りに母と出かけ、今日は和歌山へ帰ってきた筆者であった。


そして大根と厚揚げの煮物で夕食を楽しんだ筆者であった。


そして、チャングムを見るか、スケートを見るかの緊急会議が行われ、衆議一致してスケートの『浅田真央安藤美紀の1・2フィニッシュ』を愉しんだ筆者と家族であった。


スケートの放送が終わったので、「まだやっとんかいな」とNHKに変えてチャングムを見ると、貧民小屋で天然痘の治療に真っ最中のチャングムであった。前に観たときもたいへんな窮地だったが、やはり今週も大変な窮地に陥っているチャングムであった。おそらく来週も窮地に陥り、再来週も窮地にはまりこみ、ことごとく解決していくのであろう。しかし、こんなに毎週毎週大変でいいのか、と思うが、今週の大変は実に意義のある大変であった。


チャングム!どうやって治したのだ」


「いえ、治したのではありません!病を病ましたのでございます。」


「病を病ますとは?」


「はい、今までは熱が出れば熱を下げよう、発疹が出れば発疹を除こうと治療してまいりました。この子は、熱が出れば熱を下げずに発汗を促し、発疹も膿も出し切るようにしたのでございます。それらを途中で止めた場合よりも、出し切らせた方がよくなったのでございます」


「おおおお!」


この【病気を経過させる】という思想は、整体界の巨人、故・野口晴哉(のぐちはるちか)先生の思想そのものである。(ちくま文庫の【風邪の効用】あたりを読んでみてね)


月に2〜3回は見ているチャングムであったが、それなりに楽しんでいる中で今ひとつ違和感を感じるのが医女チャングムの「治療」「治療」の連発であった。


この場合は主として投薬。補助に鍼。


病気というのは治療をしないと助からない、治療をすれば助かる、という概念をこれでもか、これでもかと押し付けるようで、「それはやめてよチャングムちゃん」と思って見ていたのであった。人の健康というものを、人任せにする発想を当たり前にしないでよ。


あのね、薬だって飲んだ人の体に治る力があるから治るんであって、それがなきゃ何飲んだってだめなの。


ゆえに「病を病ます」のせりふに「よしよし、それでいいのぢゃ」と思わずうなづいた筆者であった。


さて、このせりふ、韓国の伝統医学にもこの概念があるのか、野口先生の思想を韓国の脚本家がどこかで知ったのか、韓国語のせりふは実はぜんぜん違う内容を言っているのを、アテレコをする際の日本語のせりふを、日本のスタッフが勝手にこういう筋書きに書いてしまったのか。


どなたか正解ご存知ありません?


いずれにしても、症状の経過を上手にまっとうさせることで、丈夫にしていく、という発想そのものが世の中に広がるのはとてもうれしい。あっぱれNHK!
・・・ってえらいのは韓国のテレビ局か。