566話 悲しい豊作

先日おでんをたいた時に、買い求めた大根は「大根足」以上に立派な大根であったが、その価格はわずか100円であった。


輪切りにしておでんに入れると、我が家で一番大きくて深い鍋が、大根だらけになってしまったほどのボリュームであった。「おでん」というよりは、「大根の煮物とおでんがジョイントした」ような鍋の中身であった。


それほどまでに巨大な大根なのに、100円とは安いなあ、というのがその際の感想であった。
だって、大根足に例えるにはきゃしゃだなあ、というような大根が二分の一にカットされて100円なんてのも記憶にあるからだ。


昨日見たテレビのニュースによると、今年は大根と白菜がとっても豊作で良質のものがたっぷり収穫されているそうだ。そして、そのニュースの続きは「だから、値崩れを起こしてしまい、出荷するほど赤字になってしまうので、出荷しないで廃棄する」という悲しい報道であった。


食料を生産している仕事というのは、ものすごく大事な仕事であると思っている。経済がどうの、株価がどうのというのがニュースのトップに来るけれども、それもこれも根底には「食い物がある」というのがあるから世の中成り立っているのである。


ホリエモンのような買収やら株やらでお金を儲けている人が脚光を浴びていたけれど、筆者は地道に食料を生産して下さる人の方が2000倍ぐらい偉いと思っている。


生産者が報われない国というのは、滅びるとさえ思う。丹精込めて天候に恵まれ「こんなに美味しそうな大根ができました」「白菜ができました」というものを、廃棄しないといけないというのは根本的に間違っていると思う。