585話 N山さんの超・安産 1

N山さんのお宅に調整に伺う。


このたび、無事第三子を出産された後の身体の整えのお手伝いである。


過去二回は出産前に股関節の調子が悪くなるのが通例で、ご本人の表現を借りれば

「はずれた」

ようになるのが、今回は産後に来たようである。


ご本人の訴える股関節の異常感や歩きづらさというものは、特別な矯正など使わずして、骨盤に「どうも、どうもこのたびはお疲れさま、ご苦労様」と手を当てている間に解消。

産後に股関節の異常感が出たから、出産が難産だったかというと、これが「超」のつく「歴史的」安産だったらしい。(「超」「歴史的」という形容詞を使用する根拠は後述)


この夏のミュートの会報に掲載された会員の方の出産体験記によると、分娩時に快氣法をやって、苦痛を転換して気持ちよさを広げるようにしたところ、


「こんな気持ちのいい体験は生まれて初めてだった」


という、「超」「快」安産になったという。


質のいいお産というものの持つ快感、気持ちよさというものは「宇宙との一体感のような」(オニババ化する女たち 三砂ちずる 著 より)「この体験をよりどころに一生、生きていけるという至福感」に至る(これまた同書より)という指摘があった。


一生出産の可能性のない筆者は、(だって男だもん)うらやましい限りである。


しかし、三砂さんの「オニババ」は、出産の持つ可能性の視点をそこまで拡大したことは画期的ですばらしいが、「じゃあ、どうやったらそうなれるの」というたぐいの本ではないので、筆者も「女性はいいなあ。かなわないよなあ」と思うところで止まっていた。


それが「快氣法を使うことで、至福体験ができる出産」に誰もが(って妊婦さん限定だけど)歩み寄れる可能性が開かれたのである。


N山さんの妊娠中の調整時に、筆者はその話をして、出産時に快を探すということはかろうじて伝えたのであった。せっかくの出産の機会なんだから、お産を通してしか味わえないいいものが味わえ、体験していただければとの思いであった。


しかしながら、快氣法そのもの稽古は十分にできる時間はなく、出産を迎えることになったのである。ちなみにN山さんの妹さんが、H谷@匠である。H谷さんも快氣法トレーナーであるので、「出産時に伸びやあくび感覚で対処するのよ、お姉ちゃん」というアドバイスもきちんとしていたのであった。(つづく)