586話 N山さんの超・安産 その2
大阪市内、某巨大総合病院での出産である。
N山さん、「あれ、そろそろだわ」
というので、入院したのだけれど、「超」安産だといっても、入院するやいなや産まれたという訳ではない。それから二日間は気配はあるものの、本格的な陣痛には至らないまま過ごされたのであった。
「陣痛促進剤使いまっか?ぐわん、ぐわん来まっせ、ただしそれで産まれるとは限りまへんけんども」(言い方の表現および方言は筆者による推定)
「や、や、やめてください、自然に産みます」
ということで二日後、いよいよ本格的な陣痛が始まった。
陣痛室に入った。
N山さんの実感では
「あかちゃんぐんぐんと降りてきている」
感じであったのだが、ドクターだったか助産士さんは、モニターか何かを観て
「開いていないからまだです」
そして一時間後。いよいよというので分娩台に上がった。
「そうよ、そうよ。ここで『お産は痛いもの』という先入観の方へ行っちゃったらいけないんだったわ。ぎゃーという方に行かないで、ふ〜っと気持ちよくリラックスする方に行くのだったのね」
というようなことが頭をよぎった(らしい)。それで「ぎゃ〜」から「ふ〜」へと転換する試みをされていたらしい。
「破水させますからね。破水させたら一気に来ますからね」
「はははい、はい、はい」
果たして、一気に来た。ほんとうに、ほんとうに一気に来たのであった。まだまだだと言うドクター(だか助産婦さんのコメント)よりも、ご本人の感覚の方がはるかに正しく、ベイビーはきっちり降りてきていたのであった。(つづく)