595話 いいお産の赤ちゃんはピンク色

ちまたにあふれているのは、一方的な男性の視点に偏ったはなはだ商業的情報な性行為関連情報である。けれども、それでもあるのはある。


しかし、出産に関してはおっそろしく少ない。医療行為としての出産か、紋切り型のワンパターン映像である。しぜ〜んな人の命の営みとしての出産情報はまったく少ない。


商業的性行為描写映像に関しては、とうていありえないシチュエーションやら、社会的に問題あるやろうというもの(って筆者が知りうる情報であるから、かなり限定されているものでも)あんなことや、こんなことまで(あんなことや、こんなことは各自ご想像ないし、お調べ下さい)豊富である。


しかし、人一人生み出すお産というものに関しては、何か日常から切り離されて、病院におまかせするしかない、「医療行為」としての狭〜い枠内の情報に限定されている。


情報の作り手は、やはり圧倒的に男性が主流であろう。であるからして、商業的性行為描写映像に関しては、想像力を極限以上にアップさせて、あんなことやこんなことまで描写した作品を作るのである。


が、お産に関しては、その想像力がぴたっと止まる。ないしは視野に入らないという状況があるのであろう。ゆえに、テレビなどで登場するお産というのはほぼワンパターンである。


テレビや映画であればおよそ顔のアップで苦しそうな顔をして、かたわらでは「がんばるのよ、もうちょっっとだからね」と励ます人がいて、さらに苦悶の表情でうんうんとうなづく彼女のひたいには、霧吹きで汗を浮かべる映像である。


それでもって、しばらくたつと「おぎゃー おぎゃー」と声が聞こえたと思ったら、産婆さんが「ほれほれ、かわいい女の子ですよ」と見せる。


ちょっと待て。


なんだ、その乾いて白い赤ん坊は。


今の今まで羊水の中におったのだよ。N山さんのような理想的無出血出産ばかりじゃないのだよ。羊水に体液に少量の血液にまみれて、ややしわしわにふやけ気味なのが生まれたての赤ん坊だよ。(その後急速にかわいらしくなっていくのがまたいい)


それでもって、全身全霊で産道をくぐってくるという、全身運動の直後で全身血行促進の結果、ピンク色しているのが生まれたての赤ちゃんだよ。赤いから赤ちゃんなのである。


見方によってはややグロテスクな側面があったりもするが、それがまた生命の誕生ってったらこういうもんだよなあ、という実感にも結びつくのである。児童販売機に120円入れたらがちゃんと赤ちゃんが出てくるという訳にはいかないのである。(つづく)