618話 ベッドと机と肥後乃守 3

この反射、おもしれ〜。


「自分にも何か買え」と言うのなら月並みでおもしろくもなんともないが、「自分で作る」というのは実におもしろい。こちらの懐も痛まない。創造性も培われる。


思い起こせば、亡父は、若かりし時、一時大工をやっていたことがあったそうだ。福井地震の復興工事に何年か行っていたこともあったらしい。


だから、我が家には、大工道具一式に砥石なども完備していた。亡父は趣味の釣りの「浮き」も手作りしていたし、晩年に書道の先生になったときも、年賀状の背景にする模様を、何種類も版画で作って、生徒さんに版木の貸し出しまでしていた。


そして、筆者もまた中学生の頃、ブルースリーのヌンチャクブームで、中学校の掃除道具入れに眠っていた「ぞうきんをはさんで使う用モップ」の、ぞうきんハサミの部分が壊れて使い物にならなくなったモップの柄の部分を持って帰って、切って削って鎖でつないで「ヌンチャク」を何本も作ったものである。


ブルースリーのヌンチャクにできるだけ似せたくて、お尻の部分を丸くする。ナイフで削ってもうまくいかないのが、「木工ヤスリというものがある」ということを知って、金物屋で購入し、「なんと便利な道具があるんだ!」と感動し、ラッカーペンキで色を塗ったら、ものに当たるとすぐにぼろぼろはがれてくるのが「エナメルペンキ」というもののあることを知って、はがれにくくて仕上がりにツヤがあり「ブルースリーのヌンチャクに似てきたやんけ」と歓喜に包まれたのを思い出す。


あまりにできが良かったので、級友から注文を取って作っては売っていたのであった。そうすると材料が足りなくなるので、まだ壊れていないモップも壊して材料にしたことを、今、母校に深く陳謝するものである。(つづく)