646話 K高校テニス部 二回目

う〜、腕がだるい。


K高校男子テニス部、2回目の講習である。


一回目の講習ののち、I藤先生との研究会を経て、試みてみるべし、というさまざまな方法を抽出して後の一回目であるので、本日は「部員たちがこれまで持っていたスポーツに関する思いこみ」を破壊すべく、柔道場を会場にして、フルスロットルで講習する。


オープニングは腕相撲。


普通に腕相撲をすると、さすが現役の高校生。ほとんどの部員が筆者よりも強い。


普通に勝負して「なんや、俺の方が強いやんけ」と感じさせた後、日本伝統・武術や整体などに伝承される統一体になって、瞬時に転がしていく。


8人全員の左右の腕でやったので、「普通のスポーツ的な使い方」の疲労で腕が「だるだる」である。


その後も「体操マットを防具代わりに持たせて、全体重を乗せた回し蹴りを叩き込んでも平気なのに、武術的統一体で蹴ると、力がマットを貫いて受け手は思わず痛みでうずくまる」

とか

「肩どうしで体当たりでぶつけ合いをして強さをはかった後、こちらが力みを抜いて体をオープンにすると吹っ飛ばされる」

とか、

「寝っ転がって腕を二人がかりで押さえつけさせて、普通に抵抗してもまったく身動きできない状態から、体を赤ちゃんの弾力に戻すと苦もなく起きあがることができる」

とか

「構えたラケットに手を当てて止めてもらい、いくら押しても相手(止めている人)は平気な状態から、ラケットに気を通して体と一体化させるととたんに押し込まれる」


などを次々に繰り出す。(もっと色々やったけど)


【日本伝統・武術や整体などに伝承される統一体】でやる分には、まったく疲れないのであるが、前後で「一般的なスポーツや筋トレ感覚でやるとこうでしょ」という比較見本をするので、その部分で筋肉がだるだるである。


筋肉はだるだるであるが心は軽い。


部員たちの目がイキイキと見開かれ、爛々と輝いてくるからである。


本日の目的は、部員たちに良質なパニックを起こしてもらうことである。身も心も訳が分からず、最強になったり、再弱になったりを数分ごとに繰り返され、いままでの心身の使い方とはまったく違う路線に、乗り換えざるを得ないと決心したくなるところまで、持ち込めれば成功である。


かなり成功したのではないかと思われる。


良質のパニックで、訳分かんなくなっちゃった、という心身の混乱の極みの向こうで、青少年の瞳の向こうに、訳分からないけど、なんかもしかして俺もやれるかも!という希望の種火のともるのを筆者は感じるのである。


楽しいなったら、楽しいな!


ところで、前記した「筆者による日本伝統・武術や整体などに伝承される統一体武術的な動きの記述」は、嘘は書いていないけれども、それをもって筆者をその道の達人のごとく誤解してはならない。


河野先生より伝授された「ニコニコタッチ」をセルフトレーニングに応用して、せっせとやっていたら、体がクリーム化をへて、餅化し、力むと気持ち悪い体になった。


そういう体をベースにして、さまざまなこの道の諸先輩が最近はさまざまな著作で公開されている優れた方法を試していくとけっこうできるものが出てきており、それらの方法を高校生レベルのまったく練れていない体の方々相手には通用しだした、いうのが現状の筆者のレベルである。


【日本伝統・武術や整体などに伝承される統一体その他の技術】がすばらしいのである。