655話 たこ焼きに始まり、ラーメンで終わる2

しかしながら、講習が進むにつれ、みなさん「ゆるゆる」とゆるみ、しなやかさを取り戻し、リラックスも力を出すのも自由自在の、リラックス統一体を獲得し始める。


自然体で立っている片足を、パートナーが両手でつかんで押しても引いてもびくともしなくなったり、ヨガの前曲げ系のポーズをしている上にまたがって人一人乗せても平気になったり。


ちょっとしたコツで体を統一して、腕相撲で急に強くなって、今の今まで負けていた人をねじ伏せたり。


そうなるとこちらも楽しくなってくるので「6人がかりで押さえつけてられているのを、体を赤ちゃんの体に瞬間的に変えることで、ぽよよんと起きてしまう技」などをご披露する。


講習会というのは、講師と受講される皆様との合作であるが、京都30%増量サービス分を割り引いても、十分に受講姿勢満点なみなさまであった。こちらの発信することを、素直に受け止めて、単に自説を披露したいだけの質問とか、周囲への受けを狙った質問だとか、悪のりして指定された実習を素直にやらないだとかの方は皆無。すこぶるいい雰囲気へと着々と変化していったのであった。


そうやって、みなさんのご機嫌がとっても良くなり、最終的には、T田さんの表現を借りると


「みんなお風呂上がりみたいになった」のであった。


拝見したアンケートでも、満足度100%満点で120点という方が3人ほどおられ、100%の方も大半で、筆者もとっても喜んだのであった。


講習後、T田さんと色々とお話をする。


この青少年センターというのは、演劇やらバンドやらをやりたい人への貸し会場というような性格もあるようであるが、実際にT田さんのような職員の皆様は、利用する青少年との距離は実に近く、彼ら彼女らの「悲嘆」「悲恋」「悲喜交々」「ぼやき」「嘆き」「うめき」「ざわめき」「うらみ」「つらみ」などなどを、うち明けられ、投げかけられる「お姉さん」のようなポジションにおられるようである。


今回の講習でもT田さんは、参加者お一人お一人が3時間の間にどう変わっていったか、ということに実に細かく気を配られ、バリアの固そうな参加者のバリアがふっと消える感じ、その人らしい笑顔がふっと出てくる瞬間などを実に注意深く見て、その変化を心から喜んでおられるのである。


筆者のスタンスというのは、自分が発見・体得したものが10のレベルにあると、「みんな、みんな、10のところに来て、来て、来て」「こんなにおもしろいで、楽やで、愉しいで」というスタンスである。したがって、理解度・修得度が低い場合は「うまくいってない」と認識するところにスタンスがあったんだ、ということがT田さんを拝見していて分かった。


参加者を「この方向へ」という指向性が強く、参加者ひとりひとり違うかもしれない「次の一歩を引き出す」という意味では、致命的な欠陥を持っているかも知れない、という自覚が生まれたことは大きな収穫であった。


だって参加者にしてみれば、どこが満点かなんて分からないんだから、今の自分が10であれば、それが20になるなら、倍の得点?ということになる。20というのは、これまた筆者から見た得点であり、もしかしたら得点したように見えない中に、その方にとっては大事な一歩があるやもしれぬ。


筆者が「本当に良いもの、良い方法」を追いかけることは当たり前だが、講習の際など、もっともっと参加者よりの見方ができれば、また見える世界が広がりそうだな、ということを感じた講習会でもありました。



ところで、人間は一度発した要求というものは、なんらかの形で処理されるまではくすぶるようである。京都駅、伊勢丹ラーメン横町で昼間食い損ねた「ラーメンの怨念」が講習を終えた筆者には処理しきれずに残っていたようである。


北大路駅前の380円ラーメン「鷹松」にて「特製担湯麺」を食して満足の筆者であった。