665話 BENの研究 3

このウナギが、このままの太さでおさまっていたとするならば、肛門、直腸からさかのぼって、下行結腸の長さを越えていることを確信したからである。横行結腸エリアまでの長さは十分にある、という手応えを得たからである。


そこから40センチ前後のものが一瞬にして外界へ出ていく。


これは、あたかもさやから日本刀を抜くがごとき様である。居合い抜きである。


しかし、日本刀の場合は、わずかながらの反りがあるけれども、ほぼ直線に近い。


腸の場合は、上行結腸はほぼ直線であるが、おなかを横断する横行結腸のところで直角のカーブがある。かつ直腸〜肛門の部分にもカーブがある。直腸・肛門付近のカーブと、上行結腸〜横行結腸のカーブの向きは一致していない。前者が前後方向なら、後者は左右方向に曲がっている。


右へ曲がった後、左に折れて階段を下りる、というような形状の「さや」から、一瞬にして日本刀を抜きさることはいかなる名人でも不可能であろう。





筆者がこの問題をこれほどまでに考えるはめになったのは、その排出時の速度にある。



本当に一瞬だったのである。これがケーキ作りの生クリームのように、ゆっくりとクリームを絞り出してデコレーションする、という速度であったら、腸内をゆっくりと下方に移動する排泄物をイメージし、頭の中には混乱は起きなかった。


一秒かからなかったのである。ゆえに「居合い抜き」という例えを使ったのである。


さらに、その形状もある。その太さや硬さが、ほぼこれこそがうんちだよね、と万人が認める硬さであったからである。(が、万人に見てほしいとは思わない)強いて言えば、太さはバナナではなかった、それよりはやや細めとは言える。


ちなみに、快便の便の含水率は80%だそうだ。便秘して硬くなり、ぶどうの房状のものになってしまうと70%ぐらい。水分が多く、90%の含水率になると形状を持てない。液状になる、ということである。


今回の「うなぎ」と同じ量が、含水率90%の液状として排泄されたのであれば、これも「排泄物というのは、いかなる形状で大腸内におさまっているのか?という疑問は浮かばなかったであろう。液体であれば、一瞬で出ていく、ということに不自然さは感じない。


日本刀のサヤから、一気に刀を抜くように、排泄時と同じ形状で腸内におさまっている、ということは30センチ以上、おそらくは40センチという長さから考えると、不可能のように思える。