666話 BENの研究 4

ということは、固体ではなく、より液状よりのものを押し出す容器と考えてみる。すると、マヨネーズの容器のような構造である、ということが考えられる。


排泄を待つ便たちは、出口付近に滞留し、GOがかかると、一気に圧がかかり、絞り出し口から出ていくという図式である。便がある程度の柔らかさを確保している場合は、この説明が納得が行きやすい。


しかし便秘気味の際の、あの硬い便の場合は、やはりすでにあの形に出来上がっていたものが押し出されるように思われる。さやから刀を抜くの図式である。


というようなことを考えていたら、夜中のネプチューンが司会のテレビに「便博士」の先生がご出演なさっていて、大腸の中の動き、というような貴重な映像を見ることができた。


腸の運動は「蠕動運動」といって、くびれの部分が奥から出口に向かって順に移動するように動くということは知識として知っていた。が、実際に出たものの太さと長さから、それが実感とくっつかなくって今回の長文になった。


内視鏡で見る大腸の中というのは、一両の長さがとても短い電車が何両も連結しているというような構造であった。そしてその一両ずつがぎゅううううっとくびれていき、それが次の車両へと移動していく、という構造であった。


いずれにしても、刀のサヤの奥の方から順に一両ずつくびれつつ押し出されていくような運動をしているということは分かった。

が、

もちろん、そういうことが見えるのは、腸の中を洗浄して何もない状態にしているから分かるのである。中身が詰まっている映像で撮影すれば、レンズが茶色くなったと思ったら次の瞬間は闇の中になってしまうことは自明である。


映像で見る腸の蠕動運動は、もったりゆったりしていたもので、一瞬で三十数センチを体外へ押し出す勢いは感じられなかった。


通常、医学界において、病的状態を観察、分析、研究して治療法を生み出す。


そういう細分化されていくのが宿命のような研究環境の中で、かえって全体が見落とされるという残念な面も出てしまうようである。


便秘の人は多い。非常に多い。そのニーズに応えるために、「便秘」を研究せず、「スーパー快便」を研究することは、結果として健全な便秘解消法につながる王道だと思うのであるがいかがだろうか。


しかし、スーパー快便時の腸の状態というのは、いまだ解明されないのであった。