687話 りきみ(生徒諸君 4)

リビングでごろごろしているすずなに、何気なく軽くパンチを打ち込んでみた(ってホント軽くだからね。別に虐待している訳じゃないよ)。


すると、簡単に頭が向こう側にポヨヨンと動いて、ショックがない。大げさにいうなら長い風船でも叩いているような手応えなのである。


ガシン!と当たらないのである。そこで自分を殴ってみると、ガシンと当たる。風船のようには動かないのである。もろにショックがある。そこで長男のひろきを呼んで「ちょっと殴らせてくれ」とパンチを入れる(ってこれまたホント軽くだからね。別に虐待している訳じゃないよ)と、やはりガシンと当たる。ショックがある。


猫が着地するときのことや、犬が着地する時のことを思い出してみると、やはり地面にぶつかる感じがしない。人間だけが、がしん、どしんとしている気がする。


人間だけが、いつも不必要に力んでいる気がする。確かに、直立二足歩行をしている人間は、転倒するということを過剰に嫌うから、不必要な力を入れすぎている。


犬や猫よりも人間はずいぶんと重たくできているからかなとも思うが、けっこう大型の犬でも人間のようにはガシンと来ない気はする。


この力みをきれいに取り去ることができれば、ずいぶんと楽になるような気がする。目下の研究課題である。