698話 痴呆と便秘

読売新聞の、たぶん火曜日の夕刊の「介護の心」という連載がおもしろい。


筆者は「生活リハビリ研究所」代表 三好春樹さんという方だ。


3月13日分より

不眠、奇声、徘徊・・・・。認知症の老人の問題行動とされるものである。それは認知症によって起こる者で、原因は脳細胞にある、なんて言われている。でも、そんなことはない、それは思考停止ではないか、と私は思う。
 だって認知症であっても。昼間はニコニコ笑って人気者で、夜はぐっすり眠っている人はたくさんいるし、認知症でなくても介護する私たちを困らせている人も、これまたたくさんいるからだ。


三好さんは、こういう例を上げている。


二週間に一度ぐらい、夜中中(よなかじゅう)奇声を上げる84歳のおばあちゃんがいる。脳細胞のせいだと決めつけてしまうと、薬で眠らせるぐらいしか対処の手はない。その施設の介護スタッフは「生活の中に原因があるのではないか」と日常の行為、行動、誰とあった、何をした・・・をあらゆる面で分析して見当したら、排便状況と問題行動が結びついたという。


一晩中眠らないのは、かならず便秘のときなのである。Fさんの【問題行動】は、実は身体の不調の非言語的表現だったのだ。調べてみると、このホームで認知症老人の【問題行動】の実に60%近くが便秘が原因だった。


そして、4月3日夕刊では次のように書かれている。


便秘に対するケアプランをきちんと立てることこそが、認知鐘楼人ケアの基本だということになる。私は、どんな偉い先生の書いたものでも、便秘について触れていない本は信用するな、と言っているぐらいだ。


と、一刀両断されている。


ケアの要点として、浣腸や下剤、または手を突っ込んで出すという『摘便』というのは本末転倒で、これでは自然な排便ができなくなる、と続く。


老人が便秘になっている原因は、便意を催したときに時を逃さないで、トイレに座って排便するという当たり前のことが保障されていないことにある。
 便意を訴えない認知症の老人はどうすればいいのだろう。大丈夫。彼らは便意を教えてくれているのだ。不眠や徘徊、不機嫌といった形で。それらは「問題行動」とよばれているけれど。