716話 逆取材 2

聞くところによると、彼女は天下のY新聞の記者ではなく、入社希望の大学生であった。さらに、今の立場は「インターン」というもので、これが入社の最終試験なのです、とのことであった。


昨日Y新聞の大阪本社に集合をかけられた記者志望の大学生のみなさまは、「はいはい、ここの5人は西へ行って、ここのグループは東へ行って」と各地に振り分けられ、彼女のグループは南海電車に乗って和歌山市へ派遣されたということであった。


東急インに一泊ののち、本日、Y売新聞和歌山支局に集められた和歌山グループは


「さて、今から和歌山城へ行くのぢゃ。そして何でもいいから取材をして一本記事を書くのじゃ。その記事をもって最終選考とする。かんら、かんら、からから(以上の文言は筆者の推定)」

と放り出され、黒の就職活動スタイルに名札をつけて、城内を右往左往して人生の岐路である最終試験に挑んでいるというわけである。


新緑の和歌山城に取材に出た。紀州徳川家の城である和歌山城は、、和歌山市のほぼ中心部の「虎伏山」の地形をそのまま利用して立てられた山城である。周囲は3面を深い堀に囲まれ、その周囲は約2キロ。市民の絶好のジョギングコースになっていて、愛好家の姿が多数見える。


今ある天守閣は戦災で消失したものを戦後に再建したものだが、堀や石垣は江戸時代の姿そのままを見せている。


なんて記事を書くのかも知れない。


城内で犬の散歩中の市民の方にお話を聞いてみた。


なんて記事を書くのかも知れない。


さて、ここまで書いて、唐突にY下さんは、Y売新聞のみを受験されたのか、M日やA日はどうなんだろう?と思った。