755話 六つ子の魂 四十六まで 3

ところで、この「赤い風船」の「遠い世界へ」にたどり着くまでに、青春歌年鑑の70年代も80年代も90年代も収録曲をチェックした。


が、記憶にはあるけれども「あああああ、聴きたいなあああ」という曲はほとんど見あたらなかった。


1960年代総集編40曲の中には、昨年の「鞆の浦弾丸ツアー」の際、ためさんのプリウスの中で聴いた「坂本九」の名曲「上を向いて歩こう」「見上げてごらん 夜の星を」も収録されている。他にも聴いて「おおおおお!」というのが何曲もある。


その「おおおお!」という感触は表現がむずかしいのであるが、大脳的ではなく、身体的に響くのである。細胞が感動し、共鳴し、共振しているって言うのが比較的近い。


筆者1961年生まれである。60年代といえばせいぜい9歳になるまである。


五つの赤い風船結成40周年、ということは、リアルタイムで「遠い世界」を聴いたのは、おそらく6歳〜7歳のころ、と推定される。


愛唱した記憶はない。


筆者の細胞が「おおおおお!」と共鳴するのは、筆者の身体がたまたま60年代に共鳴するような組成になっているのだろうか。


はたまた60年代に肌に降り注いだものが、細胞に吸収され、休眠しているのであるが、60年代の中の特定の波動を受けると、その休眠細胞が目覚め、共鳴・共振し始めるのであろうか。


どちらかというと、後者の説ではないか、と思われる。


その日は、和歌山から車で尼崎に行き、母上を乗っけて墓参りに行くという、毎月定例の日。車にはざっと5時間は乗っている。その間ずっと「遠い世界へ」をエンドレスで聞き続ける。

単にBGMとして聴くのではなく、全身全霊で共鳴しつつ、自分でも歌いつつ聴くのである。昔の歌であるから、3分少々。一時間に20回弱は聴く。自宅に帰ってからも聴いたので、一日にざっと100回は聴いた計算になる。


からだを通して100回も聴くと、色々と見えてくるものもある。


そこに恐るべき仮説が浮上した。


「遠い世界へ マントラ説」である。(つづく)