800話 朋(張くん)あり、遠方より来る

13日。

火曜日以来ずっと自宅に帰れていない。


さらに言えば、先週の土日は鞆の浦で、結局日曜日の夜も、実家に一泊したので、先週の土曜日以来自宅には月曜日に一泊しただけである。


好きこのんでそうしたわけではない。水曜日は仕事でぐぐっと遅くなったためやむなく道場に泊まり、木曜日はJR阪和線脱線事故で不通のため、南海線は振り替え客で大混雑と聞いてまたしても道場宿泊。

そして、夜の整体の予約を取らずに開けていたこの金曜日は、ようやく自宅に、それもわりと早い時間に帰られるはずであった。


・・・・ら、明日の夜来る予定の、10数年ぶりに合う、大学の合気道部の同期、今じゃ隠岐の島の町役場の地方公務員になった「への」ことI上朋張くんからの電話である。


予定では、土曜日の昼の公務を住ませ、帰郷を一日延ばして大阪泊まりとして、その夜に同窓生誘い合わせて飲もう、ということになっていた。


しかし、この大型台風である。15日の帰り便が不通になるやもしれぬ、ということでやむなく帰郷を一日繰り上げて、「明日の夜の約束はキャンセル」という連絡であった。


「今どこやねん」


香川県からの移動のバスの中、もうすぐなんば」


彼の今宵の宿泊は、道場から徒歩5分のホテルオークス(偶然)である。


「なんや、それやったらまだ道場にいてるから、ホテルに着いたら連絡してこいよ」


ってことで、予定の前倒しで、へのならびに、同僚のYさんとともに、香川経由のため「うどんはもういらん」というので、カジャナでインド料理を食いながらの会食。


なんでも、明日は伊丹空港隠岐空港のジェット便がめでたく就航!ということで、空港で「隠岐民謡と踊り」などのセレモニーをにぎにぎしく行って、就航を祝い、話題をつくり、一人でも多くの方々が隠岐の島へ、という重要な任務で来阪されたということだ。


そして隠岐の島からは「阪神中日戦 甲子園ネット裏で観戦ツアー」などと工夫を凝らし、満席のジェットが来阪するのだそうだ。


のに・・・台風も来ちゃった。


それにしても、への君もYさんも、少しも力みかえってはいないけれども、しっかりとその両肩に「隠岐の島」を背負っていることが会話のはしばしに感じられた。ほんとうに隠岐の島の振興と、隠岐にすむ人のために働いているんだ、というのがひしひしと伝わってくる。


律儀な彼は、わざわざ隠岐土産をホテル着で「クール宅急便」してくれており、隠岐名産「イカの沖漬け」(釣りたてのイカをそのまま醤油にどぶんと漬けたもの。すこぶるうまい)にイカの一夜干し、さらにはトビウオのミンチ、さあ鍋にでも吸い物にでもどうにでもして!という豪華三点セットである。


しかし、ここ十数年大学時代の友人との交流というのは、すこぶる少なかったというか、皆無であった。


しかし、ここ2ヶ月実に頻繁である。Y木君の演劇プロジェクトから始まり、同窓会に出て、一年上の弁護士になったA須さんにお荷物遺産の相続問題をお願いし、そして本日はへの君と十数年ぶり。来週木曜日は、大学でミニコミを作っていた時の後輩のO國さんが、西中島町内で司法書士かなんかを開業していたことが判明し、Y木氏とともに会食。翌20日にはバイト先の大先輩よしやんが、これまたいらっしゃる。


怒濤の大学プチ同窓会攻撃である。


どうやら結び直しの時期、とでもいうような時期のようである。


ところで、台風のため、土曜日の夜宿泊予定をキャンセルして、14日の飛行機で隠岐へと帰ったへの君であるが、分厚い雨雲に空港をシャットアウトされ、結局飛行機は伊丹空港に引き返したとのことであった。