805話 なぜか腹が立って

ある地震報道で、現場の記者が「余震が怖い」と家の前に座り込んでいる人にインタビューしていた。


「今一番困っていることはなんですか?」


筆者は、怒り狂ってテレビに向かって叫んでいた。


「どアホ、お前は一番にしか興味はないんかい。二番以下の困ったことはどうでもいいんかい。」


あのね、何かで優勝でもしたスポーツ選手のインタビューとちゃうんよ。「この喜びを誰に真っ先に伝えたいですか?」という質問に対して筆者が怒り狂わないのは、そんなことどうだっていい、という質問だからである。


スポーツ選手の返答がどうであっても、見ているこちらは「ふ〜ん、そうなの」で済む。単に興味本位で観客として見てれば良いだけである。興味本位だからこそ、一番は誰?というゲームかクイズとして観ることができるのである。


「この喜びを伝えたい人をどんどんいくらでも何人でも列挙してください」では「娯楽」としてはおもしろくも何ともない。


「今一番困っていることはなんですか?」という質問そのものは、被災者の対しての問いかけとしては不適当ではないと思う。その情報によってどういう支援が適当なのか知ることができる。だから、この言葉そのものに腹が立ったのではなかろうと思う。


しかし、筆者は強烈に違和感を感じたのである。そのテレビの記者は、顔は深刻そうだし、声だってもちろんまったくふざけてはいない。ただし、使っている頭の回路だけは、スポーツ選手のインタビューと同じ回路であった。(と感じた)


娯楽番組と同じ回路でインタビューしていやがる、という臭いを強烈に感じ取ったから、筆者はテレビに向かって吠えていたのである。って3日たってもまだ怒って、書いている。


こうやった書いたお陰でだんだんと整理されてきた。


スポーツ選手へのインタビューの場合なら、視聴者寄りのスタンスで違和感はないが、被災者へのインタビューは被災者よりのスタンスを取ってくれよ、と筆者が思っているということが分かってきた。


娯楽番組とは脳の回路を切り替えろ、というのはやはり思う。