819話 塩

かなちゃんが元気にならない。


これぐらい整ったら、だいたい復活してきて、のびのびして、にっこり笑って復活する、という段階にきてもぐったりとしなびている。


ふと思いついて『天然塩』をなめさせると「甘い!」という。甘い間はちびちびのなめさせていると、むくむくむくむくっと復活して、調整済みかなちゃんになった。


芝居好きの彼女は、今日も観劇の帰路に道場に立ち寄ったのであるが


「この状態で観たかった!」

を連発していた。


最近「塩」は単に「塩分」と呼ばれて、悪者扱いされている。お払い?やら清めに使われ、生命にとってなくてはならないお塩を厄介者扱いする昨今の風潮は、何か勘違いしているように感じる。


昨今、食卓から季節感が消えた。年中同じものを食っている。せいぜい外食で「ざるそば」が、自宅で冷やし中華やそうめんが加わるぐらいのものであろう。


少し前なら、発汗の盛んな夏は、キュウリやトマトやすいかに塩をかけて食べるのが自然な夏であった。


かなちゃんを観た前日、ある男性の色物のTシャツに塩が浮いてた。冷房だらけの日常でも夏は夏。塩はしっかり体外に出ているのである。


なんとなく体にしまりなく、でれでれっと力が入らない時、なめてうまく、甘く感じ、体がまとまる感覚が得られるようなら、きっと塩不足である。