903話 小さい秋みつけよう 1

26日

涼しい!

朝から涼しい。朝が一日の中で一番涼しいのはあたりまえだけれど、朝っぱらから暑い!昼夜ぶっ通しで暑い!というのにあんまり慣れていたものだから、ついつい朝がちゃんと涼しくなっているのを感じて嬉しくなってしまう。


駅まで歩く時の日差しも、刺すようではない。


思わず「♪小さい秋 見ぃつけた」などと口ずさみたくなるが、誰もで出てくるであろう


♪誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが見つけた

♪小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた


の後に続く歌詞を一切失念しているので、口ずさむことができない。


「モズの声が何タラ」と歌っていた子どもの頃の記憶がある。モズってえと冬の草むらに枯れ残っているとげとげの木にカエルが串刺しになっているのをみて「これはモズの犯行だぜ」なんて会話を子どもの頃にした覚えがあるので、「小さい秋」という歌は、モズが跳梁跋扈する晩秋から初冬の歌なのかなと思う。


ようするに、「小さい秋」の舞台は、晩秋(初冬に近い?)どこもかしこもとっぷりと秋なのだけれど、それをミクロに切り取って「おおお、秋!」「これも秋」と感動して作った歌なのだろう。(と勝手に推測)


つまり「これも秋♪ あれも秋♪ たぶん秋♪ きっと秋♪」


というその昔、松坂慶子の歌った『愛の水中花』のごとき情景を感じて作られた歌なのであろう。


以上の推測から、9月下旬の猛烈な残暑、残暑と言えないような暑さが、ふっと一瞬気を抜いて秋の顔を見せた、という今の時期には、「正しい季節感と季節ソングの掟」を厳密に適用するならば、まだ「小さい秋」という歌は歌ってはいけないのであろうと思われる。


これは11月中は断じてクリスマスソングはかけてはならない、とか、年が明けるまで「春の海はBGMに使うべからず」という暗黙の季節限定ルールなどと同列に扱われるべきものではないかという訳である。


しかし、筆者は例えどれほどの非難・誹謗中傷・悪口雑言・罵詈雑言を受けようとも、今「小さい秋」を歌いたい。実際には歌詞を覚えていないから、頭の中でインストゥルメンタル(っていうの?)でBGMとして流したい。

なぜか。(つづく)