935話 『挫折と思いやりと連続殺人』1

『挫折と思いやりと連続殺人』

土曜日


今日は道場で泊まるつもりで出てきたのであるが、自宅から「車のバッテリーを上げちゃったので、帰宅したら車を引っ張ってきてつないで充電よろしく」のSOSが入った。


今回の「前説前 前説」は「一回だけじゃなんだから、せめて二回はやってね」とのことであったので、当初の予定は土曜日の夜と日曜日の昼の二回。来週末はあさちゃんの空手の西日本大会なので、昼の部を済ませたら夕方には帰って、あさちゃんの空手の稽古に昨日発見の「下半身から体の中心を決めて、自由で力強い腕の動き」を取り入れようと思っていた。


楽屋では守家さん、杉本さん、森優子さん、田中幸彦氏など、ふだんから道場に調整に来られる面々も多いので、役者のみなさまにもピポパと短時間整体にいそしむ。


演出の丸尾氏が「足はどうですか」と声をかけたのが、客演の大阪新撰組の下村さん。


この下村さんの反応が良かった。足の疲れているところと全身の関係の中のアンバランスを観て、そのバランスを取る。要は「すっきりと立てる」という程度の数分の調整であったが、


「えええ!、これはいい。これは使える、芝居に使える、わ〜、教えてほしいなあ」


豚もおだてりゃ木に登るのであるが、筆者も簡単に木に登るタイプであるので、こういう反応があると、とても嬉しい。


土曜日の夜の部の後、音響さんから「お客さんの集中度合いが良くなってますよ」と言われ、もう一本木に登り、S本さんから「津田さんがやったら、お客さんがよく笑う」と言われてさらに一本登る。


車の修理をするとなると、明日は明るいうちに帰らないといけないので、日曜日の二回目の前説前前説(まえせつ まえ まえせつ)までは残れない。日曜日の二公演もぜひお手伝いさせていただきたい気になった津田であった。


そこで朝のうちに車のバッテリーの修理ができるようにと、泊まりの予定を変えて急遽自宅に帰ることにする。


地下鉄谷町線から、天六堺筋線乗り換えることにしたが、あれ、ここって乗り換えがずいぶん遠いのね。前を女性が二人走っている。どこ行きに間に合うように急いでいるか分からなかったが、発作的に走って追いかけて、滑り込みで天下茶屋行きに乗る。結果的にこれで和歌山行き最終特急に間に合ったので、走った甲斐があったのである。


日曜日。朝から無事バッテリーの充電を終わらせ、芸術創造館へ。いよいよ千秋楽の二公演。(つづく)