937話 五感
芝居の前説でも一部ご披露した「五感と体運動」をあらためて考え直して、頭に浮かんだこと。
鼻は、空気の流れを追うように動かすことでよく働く。
小鼻を動かすのもいい。
耳は対象を絞る前は目を閉じてじっとして使うが、聞き耳を立てる時には、ゆっくりとその方向に横方向に体を動かすとよく働く。
人間では退化はしているが、耳そのものを動かすことも有効だろう。
味は舌や口内を動かすことで、よく味わえる。
触覚も、対象との接点を緩やかに動かした方が質感が分かる。止めていると感覚は薄くなる。
目だけは、首や目玉を動かすほど像が結びにくくなる。運動をともなう要素が低い。
その視覚に圧倒的に頼るのが現代生活である。
動かないで理屈ばっかり言ってしまうのは、このあたりにも原因があるかもしれない。