1091話 タマネギ炒め速読

今日は日曜日でオフである。


晴れれば、咲き始めの和歌山城の花見といきたいところであったが、雨である。


家族も、ひろきは中学時代の同級生たちと「カラオケ」である。フリータイムになる12時間点から夕方まで、延々歌いまくるらしい。今回は歌いまくりだけのようであるが、中三のまだ受験が緊迫してこない時期には、カラオケの後、日帰り温泉というコースを採用していた。


六甲山へ一人で日帰り登山に行ったり、週末には友人たちとキャンプに行くなどしていた我が中学時代の「アウトドア野生傾向」に比べて、なんか「4丁目老人会 親睦旅行」のようなメニューの昨今の中学生である。


あさちんは、ダンスである。昨年もそうだったが、エアロビクスの発表会があり、そこにゲスト出演するのである。


あさちんを片男波の体育館に送り、バッティングセンターへ立ち寄る。


ここは時間貸し打ち放題はやっていないので、いきおい慎重になる。日曜日の午前中ということもあって、平日はがらがらなのだが、込んでいるから打ちっ放しはますますできない。何ゲームか打った後、打席を譲る。


インターバルの間、「十方の歩み」「六方」を試みる他、速読の「高速ページめくり訓練」をはさむ。なかなかに成績が良い。


夕方は、家内とならんでカレー作り。タマネギを丹念に炒める。左手にはフライパン、右手にはしゃもじで、それぞれを『勾玉グリップ&プチグリップ  ワンキグ M905 i EX」で握るのは言うまでもない。


少しまともな握りができるようになってくると、至らぬ点への不満が増える。特に右手にまだまだ無理がある。


炒め終えると、デストロイヤーS川さんからメールが来ている。


なんでも速聴しながら速読をすると、すばらしく速度が上がる手ごたえがあったというのである。


ふむふむと思いながら、本日読みかけの隆慶一郎氏の傑作「影武者徳川家康」の「中巻」を読む。


おおおお、なんだこれは!


先日の速読教室の際にみなさまにコツの一つとしてお伝えした「本の向こう側まで気を通して読む」という手法が自然にできており、その密度も増しており、速度も格段に上がっている。


影武者徳川家康は、文字も小さくまた改行会話も少なく、ビジネス書などに比べると速読はしにくい。それがまあ読めることよめること。


速読のコツ 1 速聴と合わせると能力はアップする


速読のコツ 2 タマネギ炒めと合わせると能力はアップする


つまりは「一見関係ない身体各部分を、その時に高速ないし難易度の高い状態で参加させるほど、能力は活性化される」ということである。


タマネギ炒めと速読の関係の解明を果たして筆者は、なかなかに偉いやつである。古今の速読研究家の中で、タマネギ炒めと速読の関係を解明したのは筆者が初めてであろう。


別に速聴が悪いというわけではなく、それはそれでぜひぜひ体験・体感・研究したいと思っている。しかし、「速聴」が速読能力を向上させるということから類推される「他の方法」の幅よりも、タマネギ炒めが速読能力を向上させるということから類推される「他の方法」の方が遙かに豊かである。


チャーハンを作りながらでも、当然速読能力は向上するであろう。速読という表現は正しくかもしれない。高速認識能力または脳の高速情報処理能力と言った方が近いと思う。では編み物しながらではどうか、片手ならどうか、ドラムを叩きながらではどうか、というふうに確かめていくほど、脳と身体の情報処理の本質に近づいていくことであろう。


速聴の場合は視覚と聴覚。タマネギ炒めの場合は、両手で違う運動をしながら、タマネギやら煮込んでいる野菜やら同時に炒めた鶏肉の香りなどの嗅覚も同時に刺激されたということではなかろうか。などと仮説がどんどん生まれる。


歩きながらではどうだ?という仮説もわく。


ちなみに、この原稿は月曜日の朝、特急サザンなんば行きの中で書いている。速聴できるテレコは持っていないので、BGMはバイオリンの超高速弾きの入った「チャルダッシュ」でキーボードを打ちながら、身体には「タマネギを炒めた時の身体運動」を想起しながら打っている。


次にバッティングセンターへ行った際には、タマネギを炒めの身体性を想起ながらバッティングをするということを試みたいと思う。


現状維持の速度での「ながら勉強」はお互いに相剋する可能性が強いが、超高速のながら勉強は能力を引き出すようである。