1134話 川とひよどり

やらなくてはならないことは、いろいろとあるけれども、今日は休みなので、またまた6日に出かけた川が呼ぶので、出かける。


降りることができそうなところを見つけては河原に降り、さまざまな絶景スポットを探索する。


そして、とびっきりの川原を見つけた。


有田川と○○川(秘密である)の合流地点。開けた有田川の河原までは廃道を伝ってアクセスは女性や子供でも楽。この点、道なき道というか、がけのようなところを降りる高野山の「秘境」よりも安全快適。


有田川は川幅もあり、水量もあり、子どもたちを遊ばせるのはやや危ないが、○○川は、両側が山と岩肌、崖になっており、そこに巨岩が累々と並び、ほとばしる水と深く紺碧の水をたたえた淵が連続し、絶景度はすこぶる高い。


南西側が山であるので、午後になれば夏の厳しい日差しも差し込まない。夏に来れば涼しいこと間違いなしである。


夏に折りたたみ寝椅子を持ち込み、冷えた飲み物などを用意し、川音を聞きながら文庫本などを読む、という光景を想像しただけで豊かな気持ちになる筆者であった。


もちろん、温泉まで指呼の間であるので、これまた至極便利である。


自宅からでも一時間かからない。和歌山インターからなら40分少々。最寄りの駅からなら20分。大阪より皆様をお招きしても、今回は河原から温泉に移動する際に、くねくねと山道を走ることなく簡単に移動可能。峠で嘔吐大会をすることもないのである。


満足の岐路、有田川沿いのやや上がったところに喫茶店の看板が出てきたので上がってみた。


ら、「間違えた!」と思った。


間違えて普通の家の庭に入ってしまったと思った。が、よく見ると「営業中」という札が掛かっており、民家の一角がたしかに喫茶店に見えなくもないスペースになっている。


庭はバラ園になっており、裏山は果樹園。


アイスコーヒーを頼んで、庭のテーブルで一服つく。


ここまでは奥さん(といっても年配のね)が応対してくれたが、庭の傍らのテーブルにはご主人がパチンコを持って座っている。


「なんですか?」


「裏の山のサクランボが実をつけているけれども、ひよどりが狙っておって、ほっておくと4日もあれば丸裸にされるから。週末に孫が来るで、残しておいてやらんと。」


と、言いながら裏山のサクランボの木に向かって干した銀杏の実のような硬そうな「弾」をびし、びしっと打ち込むご主人であった。


さらに「昨日まではラジオをかけたら逃げよったけど、なれてしもうてどもならん」


「爆竹でも、一時しか逃げよらん」


と、裏山に向けてセッティングされた「花火発射台」に「ぱーん」と弾けて音を出す打ち上げ花火をセッティングしては、裏山に打ちこむご主人であった。


お孫さんが来る週末まで、日がな一日ひよどりと戦うご主人であった。


昔なら、この時期奥山に帰って行ったのが、季節が早くなってひよどりが帰らなくなったという。