1169話 不思議はない。
バッティングのことが再々出てくるのは、自分の予想よりも上達が遅いからである。
武術的な動きの向上や、速読による情報処理の方法の変化、動体視力の向上などを考えると、「もっと生きてきていい」という思いがあった。
速読で、理解度よりも速度を優先する意識でやっていた時のこと。
例によって「現状はどうよ」
ページをめくる速度を一定にして、この速度の理解度がついてくればいいわけである。
1ページめくるごとに反射的に理解度を点数表示することにした。もちろん「ちぇっ、全然分かってないやんけ」などの感情は交えず「もっと理解度を上げんかい」などと命令もしない。
淡々と50%、60%とおよその感覚を告げていく。そんなに厳密に「どういう基準で60%などと言えるんだ」などとこだわることはない。さっき読んだページよりも理解しているとおもったら数字をちょっと上げ、分からないと思ったら数字を下げればいい。
ページを重ねていくうちに、それらしい数字にはなってくるのである。
淡々とデータを積み上げれば、例によって理解度がぐいぐいと上がってくる。その時に「見方」「視野」「呼吸」「姿勢」などなどが、ぐいぐいとそろってくるのが感じられた。
ぐいぐいとレベルが上がってくるのである。
上がってきてみて、わかった。
バッティングに生きてこない理由。活かせるレベルになかったからだ。
速読でこれだけむらがあるものが、一瞬の打撃に生きるはずがない。