1204話 私は○○な人なんですぅ〜 という嘘


月曜日の特別講座を受講されたT代さんが整体を受けに来られた。


まずは第一段階の「やったことのみを書き出す」ということを、まだやっていないという話になった。


T代さんは言った。


「私は、自分が納得しないと絶対にやらないタイプなんです」


その言葉の強さと揺るぎのなさといったら盤石のごとく、巌のごとく、いかなる削岩機でもドリルでもダイナマイトでもとうてい穴をあけることをあきらめさせるような「誠にきっぱりとした言い切り度」であった。


10分後にT代さんは言った


「私、ごちゃごちゃ考えないで、まずはやってみるタイプなんです!」


その言葉の強さと揺るぎのなさといったら盤石のごとく、巌のごとく、(以下同文)


どっちやねん。


でもどちらも揺るぎないその人なのである。つまりその時々でなんの一貫性もなく、「私はこういう人なんです、考えなんです、信念です」ということをコウモリのようにひらひらと転向しつつ、それに気づかないぐらい記憶をねつ造していくのが自意識なのである。


自意識の思っている「私」なんて、この程度のいい加減なものなんだから、そんな自分の思いを大事にすることはないんじゃないの、違う角度から自分の能力と出会ってみまへんか、というのが今回の講習なのであった。


T代さん、まずは無心にやってみて、そこから、信じられないぐらい賢い自分がお出ましになるので、それを体験してから次を「考える(考える必用はないんだけど)」ことに渋々納得。


「自分の無意識および身体がやりたかったことい気づく」ための「メモメモ書き出し方式」を翌日やるということで帰宅。


昼ごろ、突然T代さんから電話。


朝の一時間に「やったことをつどつど書き出す」をやったという。


お母さんの介護やらなんやらを含めて、メモを取ることさえ邪魔に違いないと事前には決めつけていた朝の一時間の予定。改善する余地もないぐらい、ごちゃごちゃと決まり切ったことばっかり山盛りであるんだかんね、というのが自意識の決めつけ。


ところが、やってみたら、なんと三分の二の時間で終わってしまった、という。


感動でいつものはきはきしたお声が、推定三割り増し以上のボリュームで、その声のトーンから驚きと感動が伝わってくるのである。


しかし、こういうのはT代さんだけではない。


講習したことをやりそうもない人をつかまえて、本当は言いたくないんだけれど、やればこうなるというデータがほしいので、「いえいえ、こんな素敵な変化やこんな感動的な体験が待っているのですよ」と自意識を説得している筆者である。


そして、実行された素敵な方々は


「こんな素敵な変化やこんな感動的な体験があったんですよ〜」


とまくし立てる。あたかも自分が発見したがごとく(それでいいんだけど。やったからこそ出会えたので)。


そしてその時点では、つい昨日、猜疑心に満ちた目で筆者をにらみ、ねつ造してその場で作った「信念」を振りかざし、非難がましい態度で筆者の貴重な時間をさんざん浪費させ(笑)た自分というのは、記憶から完全に消去されているらしく、その非礼に言及された方は今までおられない。


しかし、その反応さえ、現在の研究の裏付けになるデータなので、たいして腹は立たない。せいぜいこのブログで推定読者300名ぐらいの方に公開する程度でおさまるのである。