1260話 先に点数をあげる

どれだけ「やろうと思っている」かでは上達しない。


実際にやっているかで結果が出てくる。


一挙手一投足を採点し続けるような試みをしていると、ふだんがいかに「やろうと思っている」だけで、実際にはやれていないかが分かってくる。


採点することで、ふっと「じゃあこうすればもう少しましになる」という質のものが少し加わる。



質が良くなったのを感じて点数を上げると、次の足らざるところが感じられ、すこしずつましになっていく。


おもしろいのは、質の良くなった部分を感じなくても、機械的に小刻みに少し高い点数を身体に宣言し続けるという方法だ。


まだ質が上がっていないのに、55点の動きの最中に57点、59点という言葉をかける。


すると身体は


「あれ、おかしいな。55点程度の動きなのに、59点だって。55点だと思っていたのは俺の勘違いかな」


と、いきなり予想もしなかった質の動きをそこに加算してくる。


これを本気で実践したY田くんは、予想を超える身体の反射に、最終的には床に伸びてしまった。



質を上げる試みには、いろいろなルートがあるものである。


身体はおもしろい。ありがたい。