1280話 いいところ
昨日分より抜粋
すると「考えてやっている」「意識を集中しようというのを頭の中だけでやっている」「顔と肩が力んでいる」「手の位置が低すぎる」「腕に力みがある」「安定感がない」などなどと、実に的確に良くないところを指摘される。
同様にいいところもちゃんと指摘できる。
と書いたけれども、後段はちょっと違った。
本当にいいところをちゃんと指摘できるのは、時間がかかる場合がある。自分のその時の心身の状態やレベルで見えたり見えなかったりする。
前に書いたけれども、空手の達人の方の構えの写真を複数の人間で見た。
この方が達人だよと紹介した雑誌の写真を見せるが、「ふ〜ん、そうなの」という感じ。見た目にはシンプルな構えを見せているだけだ。瓦を30枚割っているとか、2メートル飛び上がって蹴っているとかいう写真だったら「凄い」となるだろうけれども。
そこで今度は、腰を立て、背骨をのばして、脇を締め、空手の型をやっている身体を作って同じ写真を見てもらったら、一同「うわっ、怖い」と言ってしげしげと写真が眺められなくなった。
ワープロソフトにそのフォントがないとその字体は表示されない。
質の悪い方は、自分の中にもいっぱい同様の「悪い質のフォント」があるから、すぐに「あっ、あれね」と表示することができる。
とびっきり質のいいものは、きっと身体の奥底ではそのすごさをちゃんと感じているとは思うけれども、そのレベルに共鳴できるフォントがないと、表示できない。
あと、最近感じること。
上達していくと、いろいろとできることが増えていくのだと思っていた。
筆者自身、上達したなんて言えるレベルではないけれど、いくつかのことがましになりつつある現状から見えてきた景色から感じることは、上達する人というのは、できることが増えていくというよりも、何がどうできていないのかが見えてくる度合いが高い人ではないか、ということである。
だからますますよりうまくなるような、結果がでるような稽古を積んでいかれる。