1292話  分けてみる

立ったまま上半身をねじってみる。


少しねじると、背中やら腰やら張り、硬い抵抗が出てきて「これ以上は無理」というところに行き着く。


もっとがんばらなきゃ身体は柔らかくならないぜ!とそこで耐えて筋が伸びるのを待つのとか、さらにぐいぐいと力を加えて押し込む。


何回か繰り返せば少しずつはやりやすくなるが、劇的には変わらない。


そこで


上半身をイメージで大量に輪切りにする。つまり数センチの円柱状のものが重なって人体になっているという構造を体感する。

で、その一つ一つの輪をねじろうとする方向に順に回転させる。


と、さっきあった抵抗感・こわばり・固まりはなんだったの、というぐらいスムーズにねじれ、可動域が一気に広がる。


筋肉や骨格の正確な構造をもとに考えれば、まず出てこない発想である。つまり科学的ではない、ということになろう。


しかし、誰にやってもらっても、何回やってもらってもうまくいくんだから仕方がない。


おそらく背景にあるのは、ちゃんと身体を動かしているにも関わらず硬いのだ、という前提を勝手に持つか、まともに全部の要素を働かせて動いているのかな、という立ち位置の差だろうと思う。


できていない方に立った方が、おもしろい。思ってもみなかった自分に出会う。