1310話 リアクションが回る
まだ兆しであるから、絶対的に体得したものではないけれども、相手に触れている感じに今までとははっきり違うものが出てきた。
触れた瞬間、今までなかった圧が相手にかかる。それはまったくまだ圧力といっていいほどのものは使わない。圧というよりは触、「触れる」という感じ。
弱いほど感じる、「それ」である。
そのピュアな一触に、相手からの「リアクション」が帰ってくる。それは「運動」の形を取る前の「エネルギーの流れ」のようなものである。
複数の箇所にその「一触」をかけて、リアクションを得て、そのままほぼ圧力ゼロでその一点を押さえていると、相手の身体の中がぐいぐいと動きだす。もちろんそれはこちらの身体内部でも呼応して起こっている。しばらく続けていると、身体の中がぎゅるるるると回転し続けている感触。
型の乱れの無理がかかっている「ごまかしの力み」の滞りやすい肩などのこわばりがずるずると、濁流の川岸の護岸のよにに崩れていく。