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N川さんが腰を壊したと言ってやってきた。


身体の要求を読むと、「立ってられない、骨盤を閉めてられない」


だ。


しゃがんで足を広げればいいけれど、その時の上半身の重みが負担になって、それが「要求にぴったり」とはわからないおそれがある。


そこで、仰向けに寝てもらい両膝を引きつけ足を開いた姿勢をとってもらう。


赤ちゃんがおむつを買えるような格好である。


N川さんは、歩いていても膝がかくんかくんと抜け、激痛が走り、朝床を離れるだけでも一苦労だったらしいが、そのかっこうをすると菩薩の表情を浮かべ


「この一週間で、これほど気持ちよく安らいだことはありません」


と感涙にむせび泣いた。


N川さんは、何としても腰痛を治す!という強い決意の元にいろいろと試したというが、ほとんと改善することなく今日を迎えた。


で「大人のおむつ交換のポーズ」をとること数分。


激痛と固まった腰は70%以上それだけで改善した。


その後の武術の稽古も、支障なく楽しめた。


N川さんは「腰痛」という「悪い状態である」という「頭で考えた価値観」の元、「治そう」といろいろやった。


筆者は、「痛みというメッセージを出さざるを得ない、今やりたい姿勢と通常の姿勢のギャップがある」ととらえ、体の言い分を読んで、その欲求通りの姿勢をしてもらっただけである。


N川さんの身体がやりたい、と言ったので、やってもらっただけである。


いろいろと試みられたようだ。しかし、「腰を治す」というスタートが違ったのではないか?いろいろやったけれども身体の言い分だけは聞かなかった。


相手がどうしようとしているのか、スタートはそこにある。


頭で考えると、すぐにそこを見落とすのは、筆者も同じだ。自分の「考え」であれこれやってしまう。


気をつけよう。