1353話 間違い電話
長男のひろきが、インフルエンザがほぼ回復したところで、後は医者の「完治」の診断待ちで登校せず家にいた。
ので、明日のネクスト講習会の予習を兼ねて
「相手の発声機能を体感視することで、相手の身体に響く言葉を出す」
を披露する。
正面を向いたまま、横にいるひろに声を響かせたり、響かせなかったりなども披露する。
明日は八木さん、にくちゃん、ときちゃんら「演劇部」メンバーも来るので、これで打ちのめしてやろうと思っている。
この声、出せるもんなら出してみい!という役者組への挑戦である。
ちょうど、テレビで「相棒」をやっていたので、「水谷豊」の身体性を我が身にかぶせ、「相棒の水谷豊」になりきってさらに話す。
ひろき、「似すぎや〜」と笑い転げる。
「物まね」とは異なる。(筆者内対比ね、あくまでも)
意識的に真似るよりも、身体性をそのままコピーした方が似る。似せようとするよりも、よほど迫って来るものがあるのである。無意識力である。
I先生から明日の部分参加の申し込みのメールが来ており、
「本来業務が多忙で、最近まったくボールは打っていないのに、稽古していることのみ身体に再現して無心で試合をしたら、6−0で圧勝してしまいました」
とのことであった。悔しがった相手が「もう一丁」と再戦を希望したので、やむなく受けたら、無心が消えてしまって
「シーソーゲームで雨天中止になりました」
とのことであった。
水谷豊の身体性のみ感じ取って、どういう物言いをするか、どういう動作が出るかは意識せず、逆に観察するぐらいの方が「真に迫ったホンモノっぽい」になる。
なんてやっているところに間違い電話がかかってきた。
さらに、なりきってやっているところにまた同じ人から間違い電話がかかってきた、のでそのまま水谷豊で出た。
※太字斜体の部分を水谷豊風に読み替えてください。
「もしもし、○○繊維さんですか?」
「いえいえ、違います。」
「あ、さきほどの同じ方ですか?」
「そのようですね」
「おかしいなあ」
「失礼ですが、どちらの番号におかけですか?」
「え〜っと、432−××4×ですけど」
「なるほど。これで真相が分かりました」
「えっ?」
「こちらの番号は××1×です。あなたは携帯電話からおかけですね。携帯電話はボタンの感覚が狭い。あなたの指は上にずれて1のボタンを押してしまっているようです。
「あ〜、そうみたいですね」
「よろしいですか。これで失礼します」
と、なりきって事件を解決した後、電話を切ったのであった。
というようなことも明日やります。