1417話 現場目線
先日、テニスのサーブというのを打ってみた。
サーブは、コートの前半分の右半分、もしくは左半分にバウンドしないと、ミスということになるらしい。
コートの大きさってうまくできているな、と思ったのは、その「サーブを入れないとだめだよゾーン」というのは、ちゃんとラインで区切られているのだけれど、170センチの筆者の目線だと、すっぽりとネットの陰に隠れるように出来ている。
つまり、実に狙いにく〜いようにできているんだなあ、ということである。
筆者の「初サーブ」は、ほとんど入らずにオーバー、オーバーの連発だった。
それだけに、印象に残った。「サーブを入れるゾーンが見えない」ということが印象に残った。
それで、それからもサーブのことを思い出すことが多かったのだけれども、私からは実に見えにくい「サーブを入れるゾーン」ではあるが、ラケットはどういうふうに見えているんだろう、ということが気になった。
狙いを付けているのは私の目だと思っているが、実際に仕事をしてくれるのはラケットである。
私からは見えにくいが、ラケットからはよく見えているのではないか?ということをY田君に話し、確かめてもらった。
ラケットのボールが当たるポイントから目までがざっと66センチ。サーブの際には若干ジャンプするから、それが4〜5センチの小さいジャンプだとしても約70センチ。
サーブ位置ではしごだったか脚立だったかに登り、70センチ上から眺める「サーブ用のエリア」は、実に入れやすい広々としたものだったという。
それを確認してからは、サーブが実に入れやすくなりました、という報告であった。
なるほど。
ということは、フォアもバックもボレーも、「私が見ている景色とラケットが見ている景色」というのは、まったく違うのではないか、ということで「普段の自分のスイングの軌跡」を人にやってもらい、本人はラケットに顔をひっつけて「ラケット目線」でボールや相手やネットや相手コートを(仮想で)見てみた。
ら、
愕然としていた。
自分が想定していた景色と、ラケットが見ていた景色は、全然違っていたのである。
自分がラケットにさせようとしていた仕事と、ラケット自身がやれると感じている仕事が全然違っていた、ということである。
ということは、というので、「空手の突きの拳(こぶし)目線」「蹴り目線」「刀目線」などなどを確かめる。
ありゃ〜、である。
ことごとく、「自分目線」とはまったく違う景色がそこにあった。
帰宅後、さらに「キーボード指先目線」とか「ペン先目線」とか「コップに向かう唇目線」などなど片っ端から確かめる。
やはり、ことごとく「自分目線」とはまったく違う景色である。
私が「していると思っていること」は、実際に仕事をする現場の声とは高確率で違うのだ、ということがあきらかになってしまった。
しかし、
動きだけのはずがない。