意識への誤解

つい今まで次回の自然体チューニング特別講座ちらし原稿を、つっくんに送るべく書いていて、下記したようなことを参加希望の方々に伝えたいなと想いながら、とうていリーフレットには入りきらないのでここに書きました。ふだんの定期レッスンに参加の方々もぜひお読みください。


≪ここから≫


世間ではまったく常識にはなっていませんが、脳科学の分野ですでに解明されている大きな事実に「人は意識では動いていない」ということがあります。


実は、人は動き始めてから、その動きをしようと身体に命令したという「記憶」をつくっているのです。もう少し詳しく説明しましょう。


コップの水を取って飲む。この時意識の上では「のどが渇いたから、目の前にあるコップの水を飲もう」と決めて、 手を伸ばして飲んだ、というふうに認識しています。


ところが、実際に脳を調べてみると、脳の「運動領域」がまず活動を始めて、0.5秒〜1秒遅れて「意識活動の領域」が活動することが確認されています。つまり、コップに手を伸ばす運動が始まる方が時間的にはずっと先で、それこそ飲みながら「のどが渇いたからコップの水を取ろう」という記憶をつくっているのです。


これは、人間が1秒間に受け取る全感覚器からの情報がけた外れに多いために起こります。1秒間に感じているすべての情報を意識にのぼらせると、認識するのに一日以上かかってしまうのです。


私の意識は、私の行動は私が命令してやったと思っていますが、実際には体が各種情報を総合して現場で判断して、さっさとやってしまっているのです。すると、私という意識の立場がないので、私の意識がやったことにしようと、記憶をつくっているのです。部下が自主的な判断で動いて上げた成果を、上司が私の指示で動いた結果だという記憶をつくっているというような現象です。


この事実を素直に認めると、学習やトレーニングなど、さまざまな分野でその「あたりまえ」とされている方法論が現実的ではないということになります。なぜなら、そのほぼすべての方法が「意識によって行動をコントロールする」ということが前提になっているからです。


しかし、その前提が間違っているからでしょうね。実際にはうまくいかないことだらけです。あれほど強くした決心が数分後には敗れ、計画は立てた直後に破綻し始める。続けようと思ったことは続かず、やめようと思ったことはずるずると続いている。


でも、やはり意識が自分の支配者だと思いたいからなのか、それほどうまく行かない「意識だのみ」を誰も手放そうとしない。だったらどうしたらいいのか、というということをここ数年ずっと追いかけてきて、その過程で「たこ焼き方式」が生まれ、渦と軸の身体操作と出合ったわけです。


どちらも、「やろうと意識しない」方法です。意識しないことで、意識する数倍の能力やパフォーマンスが自分から引き出される経験をすることができるのです。