災害ボランティアセンター運営マニュアル

見てみたかったボラセン運営マニュアルが宇治市のものが公開されていたので、読んでみた。


http://www.uji-saigai-v.net/img/data/manual.pdf


とても納得した。おそらく他の市町村でも、これにほぼ準じた内容のものを用意されているのであろうと思われる。そうすると、被災地で「何でやねん」と、疑問に思うことがことごとくマニュアルに忠実に運営しようとした結果であろうと想像できた。


■ボランティアは来ないで下さい


全体的には「やっぱり」だけど、救いはある災害ボラセンマニュアルであった。


何で「市内に限るねん」というのも、ちゃんとマニュアルに市内、府内、全国というぐあいに書いてある。


「さっさとボラセン立ち上げへんのかいな」という疑問は、マニュアルのボラセン設置のタイムスケジュールがあって、そこに72時間以後と明記されている。


そこのプレスリリースの文言として、災害初日、二日目、三日目とも「まだボランティアに来ないでください」と言うと明記されている。


ここ3日「現場を見てくれ」「現場を見て考え、対応していきましょう」ということを書いてきたけれども、このマニュアルを見て、現場に出なければということを感じる人はまず皆無であろう。


運営統括というセクションの情報・対応というセクションはある。活動状況の把握という文言もある。ところが情報のソースは「電話・ファックス・メール・口コミ」である。現場に行かんかい!


活動状況の把握を「活動200名 県外50名 県内150名 うち市内100名」「ニーズ120件、終了32件」というような実態を分からないままの数字の把握で、それ(活動状況の把握)をやっていると勘違いする可能性は感じる。 


ボランティアで対応可能かどうか判断するセクションはある。ようするに「それはできません」と断るセクションはある。



■ボラセンの箱の中には詳しく、外へは乏しい内容が惜しい


被災家庭にボラセンの立ち上がったことを周知するための文言はない。だから、たぶんマスコミ発表だとか有線放送だとかになるのであろう。しかし、過疎地の被災地などでは情報が行かない。電話が不通だったりする。だから、被災現場へ行って、ちらしを配るとか、直接聞き取るというようなことをしないと、電話が通じて新聞が届いて、テレビが見られる程度の被災家庭からニーズが先に来て、受付順にできるだけ派遣しようなどと公平の原則をそこで持ち出されると、甚大な被害のところが後回しになるということになる。


現場が広域であったりする場合のサテライトの必要性のようなものは、ほんの一行「望ましい」と書かれていた。でもサテライト運営のノウハウは一行も書かれていない。現場からボラセンを見ないとサテライトの必要性が分からない。だから、基本的にスルーされそうである。


サテライト設置だと、受付をボラセンでやらずに、サテライトで受付するとか、それを広報周知するとか、ボラセンで受け付けオリエンテーションをして、サテライトまで車両ピストンするとか、団体バスを直接サテライトに行ってもらうなどの現場に即したプランと実行が必要になるが「マニュアルに書いていない」ので、後回しになること必至である。


職務に忠実であるほど、マニュアルに文字数が割かれていることを忠実にやろうとして、現場を見ないでことは進む。


ボラセンのスタッフとしては、社協関係者に限定されるように書いてあるのかと思ったけれど、以外なことにそうではなかった。平時から登録している団体はOKになっている。さらにボラセンスタッフとして活動が可能なボランティアとも一行さらりと書かれている。


書かれているが、想定されていないことは、今までのボラセンでの「最初はけんもほろろ」という対応で明確である。


本当にボラセンの人に悪意はないのである。文字数が割かれていることは、ほんとちゃんとやっておられた。だけど、一行しか書いていなくて、具体的でないことは見事にスルーされていた。まさにマニュアル通りだっただけなのである。



■全社協のマニュアルとは内容がリンクしてませんけど


ところで、ボランティアとして来る前に、全社協の水害マニュアルを見ておいてねと書いてあったので見てみた。


社協の水害マニュアルというのは2ページのイラストもので、とても分かりやすい。


そこには、「あると便利なもの」という半ページに「チェーンソー トンパック ユンボ(コンマ1がいい) 軽トラ」などが明記されている。そのとおりである。あると便利である。


だけど、市のマニュアルを読む限りは、そういうのを持ち込んだ場合の対応は文字数がまったく割かれていない。


だって、現場に張りついていないかぎり、それらがどれだけ活躍するかなんて分からないから。被災地救援マニュアルではなく、ボラセン運営マニュアルであった。


だから、救いはある。マニュアルに書かれていれば忠実に実行する方々なのである。


■改定案


ボラセン立ち上げまでの72時間以後というタイムスケジュールのところに、必要性が緊急な場合、それより早く立ち上げたら偉い!と書いておけばいいのである。


ボランティア募集も、最初はオープンにして、人が集まるようなら府内、市内と絞るようにすると書いておけばいいのである。


マッチングして送り出したら昼間はぐっと手が空くのだから「送り出し後には、実際の作業現場に立ち会い、またボラセン受付のチラシを配る」と書いておけばいいのである。「実際に行われている作業に精通するボラセンスタッフは偉い!」と書いておけばいいのである。


一般の作業ボランティア以外にも、「トムがオフロードバイクで現地の詳細を報告に来たり、萬ちゃんがトラックで駆けつけたり、鈴木さんがユニック車で駆けつけたり、黒さんや助さんやトラちゃんやのんちゃんがユンボとともに現れたり、のぶさんや高田さんがチェーンソー担いで現れたり、たけちゃんがベビーカステラテキヤ・カーで現れたり、トールさんやシェフやアリトさんやはからめ夫婦やおざやんや池田さんが炊き出しの大鍋とともにやってきたり、でぐっちゃんや浅やんが野菜を積んでやってきたり、ひーさんがかき氷器完備の軽トラで現れたり、作務衣の整体男が出現したり、とっぴーさんが高圧洗浄機とともにやってきたり、なかこさんがユーストリームで放送したり、富士子さんが種をまいたり、ハッピーがなすびの格好で募金を持って出現したりするので、驚かず、現場で調べた実情に合わせて、適当なところを割り振るなり、現地の土地のとりまとめ役の方とつなぐなり対応するように」とマニュアルに書いておけばいいのである。


このマニュアルが改訂されない限りは、今後の災害でも、よほど現場主義の方がトップに座らない限りはおなじようなことがくり返されるんだろうなあ。


だけど、大本の何かが改訂されたら、たぶん「右へならえ」ということだろうから、ちゃんと良くなるような気もするのだけれど。どうやったらそうできるかは分かりませんが。


そんなたいそうなことは言ってないつもりです。現地現場の情報を徹底して集めるセクションを作って、また受付業務がひまな時間帯は、ボラセンスタッフもとにかく現場に行きましょう、というような文言が明記されればいいだけなのですが。途中、冗談めかして書いた部分もあるますが、この最後だけは本気でそう思っています。