あと1年

先日、53歳の誕生日を迎えた。


父親のことを思い出す。ガラス瓶製造会社の技術者であった父親は、50歳を超えたあたりで、提携したタイの工場に技術指導に長期間行っていたりしたから、そこそこの立場だった。

当時は、ちょうど定年を55歳から60歳に伸ばすという過渡期。昇進昇給なしで60歳までいるか、55歳になる前にやめるか。55歳定年といっても、当時は3月末で一斉に退職というふうだったらしく、実質54歳で会社を去るということらしかった。


休日出勤などざらで、早い時間にも帰ったことはあまりという会社人間に見えていたので、当然父は60歳まで働くものだと思っていたら、54歳で辞めてしまった。


のちに母に聞いたところによると、管理職だった父は、まだそんな言葉はなかったけれど、リストラ係を振られたらしく「会社に残ってほしいなという人はやめ、やめてほしい人は辞めない」というような傾向をぼやいていたらしい。


いずれにしても、首を切る側にいた側がのうのうと残れるかということもなって、54歳でスパッとやめた。


会社を辞めた後は、弟の経営していた個人商店に近い小さな会社を手伝って週に3回ほど出勤し、通信教育で資格を取っていた書道を、先生について習うようになり、さらには分家?して公民館で教えるようになった。


高校の同級生たちと同窓会ゴルフを毎月楽しみ、横の河原を整地してパット練習場を作り、兄夫婦に初孫が生まれたら、もうべったり。


実に充実した「リタイヤ後の生活」を楽しんでいたように思う。そんな親父がリタイヤした年齢まであと1年という年齢になったことが信じられない。まだまだガキです。