苦難を乗り越えると自信はつかなかった

「苦難を乗り越えると、自信がつく」 世の趨勢はそうなっているようである。


本当にそうなんだろうか。


筆者の人生の中ではそうはなっていない。


およそ苦難と言えるような体験が少ないからかもしれない。他人が聞いて分かりやすいのは、徒歩で日本を縦断したことかと思う。2800キロほどを歩いただけである。


なにかすごいことをしているかのように錯覚される方が多いが、別に仕事もしないで3か月ただ歩いただけだから少しもすごくない。マラソンの選手なら一日20キロ〜30キロぐらい練習している人もいるだろうから、4か月もかければ、大学に通いながらあるいは仕事を持ちながらそれぐらいの距離の移動はできる。


しかし、根性なしの筆者にとっては十分苦痛はあった。いくら歩いても足は痛いのである。毎日歩いているんだから、慣れてくるのかと思ったがそうではなかった。


で旅を終えて帰ると、いろいろな人が「自信がついただろう」と言う。


まったくそんなことはない。自信がつくということは「次も大丈夫」と思えることである。筆者は「次はもうだめやね」と思っていた。「二度とはできないね」と思っていた。「一回だからできたんだろうね」と思っていた。だから、「何があってもあの苦難を乗り越えたのだから大丈夫」などという発想はほとんどわかない。


「みんなが社会に出てからどんな苦難にも負けないように、鬼のようにしごいたのです」と語っている大学野球の指導者の方がいた。


うーん。私の回路だと「あんなしんどいこと、二度とごめんだ」という反射をしてしまいそうである。


はたから見たら、どう見ても苦難の連続なのに、本人ちっとも気が付かないでそんなもんだと思っていて、時が経つと見事にことごとく難題をクリアしていた、と言うのならいいなと思う。


私以外のみなさまは、苦難苦痛苦渋苦労を経過したら、何が来ても負けない自信がつくという人生を歩まれているのだろうか。