781話 ぬかにぬか

無洗米というお米がある。


米のとぎ汁がいったいどれくらい下水に負荷をかけているんだろう!と思ったある精米業者の方が、「じゃあ米をとがないでもいいお米を作ろう」と思い立って作ったそうである。


そして試行錯誤の結果、精白後の白米にまだこびりついている微量の『ぬか』を効果的に取り去る方法にたどり着いた。


それは「ぬかはぬかで取る」という方式だったそうだ。


ぬかよりも柔らかいものでは取れない。ぬかよりも硬いものではお米が痛む、ということだったらしい。


同質なものほど摩擦が大きい、ということである。あるいは「影響し合う」ということでもある。


性質の差が大きすぎると、摩擦もなければ影響し合うこともない、に陥る可能性がある。



レコードの針というのは確かダイアモンドという超硬質なもので、レコードという樹脂の板はけっこう硬いもののように思えるが、針がレコードの溝を走る拡大高速撮影映像を見ると、レコードに刻まれた音声に添ったでこぼこの上を針が通過する際には、その凸の部分が、柔らかいゴムのようにふにゅ〜っとひん曲がってぷるるんと戻るのである。


硬いダイヤモンドが通過するのであるから、みるみる表面が削られて、「10回も聞けばすり切れて音が出なくなる」、に「ならない」のは、両者の硬度の差がそういう現象を生み出すからである。


こういう現象が、人の体を調整したり、人の心理に好ましい状態に変化させるのにも十分関係している、と見ている。


同質なもののアプローチによって得られるもの、異質なもののアプローチによって得られるものをどう使い分けるか、使いこなすか、という取りあえずテーマだけは浮かんでいる筆者であった。


よく分からないながらも、大事だぞと勘が告げている筆者であった。