816話 こちらだけ変わるのはまだまだ本物ぢゃない

30日

太ももの裏側の付け根、座骨の下の閊えをゆるめる調整を稽古した。


通常、ここは「脚を軽くするところ」として調整して、軽快に歩けるように、呼吸器(胸)が広がる誘導として使っている。


仰向けで片足ずつ脚を上げると嘘のように軽くなったのが分かる。歩くと踏み出す足が軽くなり、軽快になる。こんな風に使っている。


通常あおむけで調整がうまくいったかどうかのチェックをするが、何の気なしにうつぶせで脚を上げてみた。ら、軽い!軽い!


ヨガで言う「片足バッタのポーズ」になる。


稽古される他のみなさんにも同じ確認法をとってもらって、忽然と悟るところがあった。


調整前は「足だけ」を上げているのが、調整後は「腰骨」も「背骨」もみんなが協力しているのである。


バランスの取れている全身の中で、一点そのバランスに合わないところがあり、その閊えを調整すると、全体とのバランスが取れて調子がよくなる、という具合に見ていた自分があった。しかし、今目の当たりにした情景は、ある一点が変わった瞬間に、ばばばばばと他のところも一気に変わっていたのである。


こちらが本当に変わったら、その瞬間に関係するもの全てがその「関係性」を新たなものへと結び直すのである。人間関係や仕事などでも、こちらが本当に変わったら、関係する全てが変わらざるを得なくなる。そういうのが本当に変わるということだと感じたのであった。


整体というのは、異常箇所の調整にあらず。一点と全体との関係の結び直しである、ということが実感を持って迫ってきた日であった。