867話 体は足し算でできているか? 1

スポーツやダンス、格闘技などの世界では、運動前にはストレッチ、時々筋力トレーニング、というのは半ば常識のようである。


それらの分野の方々が、せっせと筋肉トレーニングをする際に、その「強くなった筋肉」は、「そのまま全体にとってプラスに働き、その分が能力に加算される」という前提があるから、せっせと鍛える気になるのであろうと推察される。


これは、機械や自動車であれば至極納得のいく発想である。1000CCのエンジンを2000CCに変えれば、それだけ馬力がアップするのは当然である。


しかし、筆者には、人体というのは、自動車のような「パーツを集めて作った機械」のようには見えない。むしろ「人の集団」や「組織」にこそ似ているものを感じる。


一人の転校生でクラスの雰囲気ががらっと変わる、とか、職場に一人が加わると急に明るくなったり暗くなったり。そういう「組織内の活性化・変化現象」のような目で体を見た方が、参考になるように感じる。


実際に手の指の異常感や痛みが、背中や肩に触れることで瞬間的に変化するなんてことはまったくめずらしくない。


これは、身体各部分が独立したパーツではなく、常に全身その他の部分との関係性で成り立っているということを指す。


特定の部分を強化すれば、パフォーマンスがアップすると考えるのは、独立したパーツの寄せ集めが人体である、という前提に立つからである。


その前提が違うとすると、何が起こるだろうか。