「抜け駆け」硬化現象
柔軟体操(前屈とか反らしとか、ねじるとか)をする際に、動作に応じて収縮する筋肉が10あるとする。
前屈にしましょう。
体を前に曲げるさいに、使われる背中の筋肉が10種類あるとします。
前屈が得意な人は、完成した前屈でも背中の筋肉に「張り」があまりありません。内圧がぐっと高まっている感じはありますが、表面がカチカチという感じにはなっていません。ぞんぶんに引き延ばされているのに、皮膚は弾力を失っていないのです。
「からだが硬い」と感じている人の背中はカチカチです。しかし、よく観察すると全ての筋肉がカチカチなのではないのですね。
どういうところが硬いかというと、前屈している最中に、他の筋肉よりも先んじてくっと硬くなる部位があります。
そういう「抜け駆け筋肉」は、表面がカチカチで、部分的で、皮下チューをかけようとしても、皮膚がうまく動きません。
その部分的な「固まり」があると、その上下は分断されて、助けあうことができません。
50センチあるゴムを伸ばせば何でもないことを、そのうちの20センチで何とかしようとしたら、無理があります。
体が硬いと思っている人に共通しているのは、そういう「体の使い方の無意識な間違い」でした。
そこで、先んじてきゅっと硬くなる部分が出てきたら、後戻りしてその部分の皮膚の弾力が消えないような角度で入り直すということを繰り返すと、ご当人にすると「信じられない」ぐらいに柔らかくなります。
今日も「生まれて初めて頭が床に着きました」「手のひらが床に着きました」という人が何人も現れました。
それは、柔らかくなったのではなく、「抜け駆けして勝手に固まっている部分をつくってしまう『いつものパターン』」を書き換えただけなのです。
この方法の魅力的なのは、体が柔らかくなるという結果ではなくって、「無意識にとってしまうパターンの書き換え」ができるというところにあるのでは、と感じています。